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2009.07.14

燃費がカタログ値と異なるわけ

ガソリン価格が上昇したり、新型インサイトや新型プリウスが大ヒットし、燃費への関心が今まで以上に話題になっている今日この頃。
ブログや掲示板などでは「カタログ値と比べて実際の燃費が悪い」とか「特にハイブリッドカーはカタログ値との差の割合が大きいのでは?」といった意見をよく見かける。
カタログにある「10・15モード燃費」と「実際の燃費」とが大きく離れている事は今に始まったことではないが、なぜそうなるのだろうか?

答えは簡単。
多くのドライバーは「10・15モード」のような走り方をしていないからだ。
(もちろん、これを書いている私もその一人だ)

「10・15モード」は、最高速度40km/h・走行時間135秒の「10モード」と、最高速度70km/h・走行時間231秒の「15モード」という2つの走行モードを、「アイドリング24秒」+「10モード×3回」+「15モード×1回」という組み合わせで行う、合計660秒の走行モード。
1015mode_2

「10モード」の詳細を見ると、最初の20秒のアイドリングに続き、7秒で20km/hまで加速している。
環境省などが唱える「ふんわりアクセルeスタート」では「最初の5秒で20km/h」を目安にしているが、なんと「10モード」のスタートは、それよりも遅いという事になる。

もはやエコドライブどころか渋滞レベルの遅さだが、それは「10モード」が実用燃費の計測ではなく、排気ガス規制による公害対策を目的として作られたものだからだ。


自動車の排気ガス規制による公害対策は、1940年代のアメリカのカリフォルニア州ロサンゼルスの大気汚染が発端。
ロサンゼルスは空気が滞留しやすい地形的条件もあって以前からスモッグが多かったが、産業の発展に伴って植物や農作物が異常な枯れ方を示し、晴天の日中になると人々が目やのどの痛みを訴えるようになった。
それは光化学スモッグという現象で、1952年にカリフォルニア工科大学のハーゲンシュミット教授により明らかにされた。
そして大気の測定により、自動車が炭化水素(HC)の70%,窒素酸化物(NOx)の60%を排出する、最大の光化学スモッグ発生源であることが判明した。
1964年12月にはカリフォルニア州でブローバイガス防止装置が義務化。 1965年12月にはカリフォルニア州で2300cc以上の自動車でHCとCOの規制がスタートした。

日本では、都市部での渋滞時に自動車のアイドリングと加速・減速が繰り返されるため、一酸化炭素(CO)による大気汚染が問題となっていた。
その対策として、1966年(S41)に日本で最初の排気ガス規制「4モード」がスタート。 「アイドリング → 40km/hに加速 → 40km/hで走行 → 停止」の走行パターンで、COの濃度を規制した。
1970年(S45)に、東京都杉並区で日本で最初の光化学スモッグが発生。
1973年(S48)には「4モード」に代えて「10モード」が導入されるとともに、規制対象をCOとHCとNOxの3成分にした。
1975年(S50)からは「10モード」の走行パターンはそのままで規制値を段階的を強化(※同時に「11モード」による測定を追加)。
1991年(H3)には「10モード」から「10・15モード」へ変更され、2007年(H19)から「JC08モード」への移行が始まった。

…というわけで「10・15モード」は、もともとは都市部の渋滞時の大気汚染の対策として作られた走行モードを基本としている。 そして、それを測定したときの燃料の消費量が「10・15モード燃費」として公開されている。
「10・15モード燃費」は実際の燃費とは異なるが、実際の走り方が異なっているのだから違って当然。 あくまで目安程度に考えよう。
なお、より実際の走行に近くなるとされている「JC08モード」だが、最初の加速は6秒で20.1km/hと、これまた「ふんわりアクセルeスタート」より遅かったりする。 近くなるというのは、あくまで「10・15モード比」という事で…

JC08モード:http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha07/09/090702/01.pdf


P.S.1
ハイブリッドカーの燃費がいい主な理由は、減速時に発電して充電し、それを加速時にモーターで使うから。
信号機が多い都市部や「10・15モード」のように減速~停止が頻繁にある場合は、充電の機会とモーター走行の割合が高くなり、燃費に有利になる。
一方、信号機が少ない田舎道や高速道路のようにブレーキをかける機会が少ない場合は、充電の機会は少なくエンジンで走る割合が高くなるので、燃費は普通のクルマに近づく。
高速道路で時おり見られる、下り坂と上り坂がセットになったV字型の地形では、ハイブリッドカーのメリットは大きい。

P.S.2
「JC08モード」の詳細は国土交通省のHPにある。 1204秒まで、1秒ごとの速度や標準変速位置が指定されている。
http://www.mlit.go.jp/jidosha/kijyun/saimokubetten/saibet_042_00.pdf
http://www.mlit.go.jp/jidosha/ → 保安基準等 → 第31条 第1節 軽・中量車排出ガスの測定方法)
測定は屋内のシャシダイナモ上で固定して行う(路上での走行だと排気ガスの収集ができないから)。
試験車両は走行抵抗(転がり抵抗+空気抵抗)をあらかじめ実車で測定しておき、その負荷をシャシダイナモにかけるので、ローラー上で無風だから有利になるという事はない。
(補足:走行抵抗の測定は20, 30, 40, 50, 60, 70, 80, 90km/hで行われる。 試験室内の温度は25±5℃,湿度は30%から75%までの範囲とする。)
これらは「10・15モード」でも同様。

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